ナイトウィザード2の記録 11月4日

報告書
宛 アンゼロット様

今回の魔杯捜索についてですが、どうやらアンゼロット様の人選は的確だったようです。
私が輝明学園にシミュティルテュと浅間桂を呼びに行ったときは、果たして任務を達成できるのかと少々不安でした。
魔物使いのシミュティルテュは素直に呼び出しに応じましたが、侵魔召喚師の浅間のほうは、シミュティルテュの説得にもなかなか応じなかったようでしたから。もっとも彼女の印象の中には私の侵魔嫌いの偏見も含まれていたのでしょう。
そして後の3人、魔剣使いの星野風音、転生者の三都明春と使徒のヤルセ=ナスも同様の不安がありました。しかし星野と三都は、それぞれ自分のコンサート中、自分がマネージャーを勤めるアイドルのコンサート中であったにもかかわらず、召集命令に応じたので、その不安はすぐに薄まりました。もっとも
三都は渋々だったようですが。記者であるヤルセが同じ場所にいたのも幸いでした。

アンゼロット様のもとに5人が集まったとき、ロンギヌスメンバーが殆ど出払っており、宮殿のイメージがいつもと異なっていたことに珍しさを感じていたようですね。まさかそのせいで、あの後あのような事件が起ころうとは思いもしませんでした。
任務は2日前に魔杯教団が紛失した魔導具「魔杯」を探し出すという単純かつ簡単なものでしたから、まだウィザードとしての経験の浅いあの5人でも何とかなるというのは、私も納得がいきました。しかし秋葉原付近の喫茶店「Cowbeya」で待っている、魔杯教団と対立している猪狩遼馬に話を聞け、という指示にすぐ飛び出した星野の心意気は認めますが、あなた様の弟子なのですから、彼女にはもう少し落ち着くように言いつけては如何ですか?それに、それを追いかけていった三都、彼女が気苦労で倒れないかも心配です。

結局アンゼロット様の用意した鏡の通路を使ったのは案内役の私と、浅間、シミュティルテュ、ヤルセの3人だけでしたが、この鏡の通路は壊すまで秘密にしておくべきでしたね。侵魔に情報が漏れているのは予想外でした。
私は3人をCowbeyaまで案内して、猪狩遼馬と引き合わせてすぐに引き返したので後は伝聞になります。
3人が魔杯について聞いたのは、それがかつてバフォメットという侵魔との契約に使われていたということ。近代になり一度は力をなくしたが、第三天使のラッパ事件がきっかけで願いをかなえる力を得て復活したこと。魔杯はトラックでの運搬途中に紛失し、紛失したのは秋葉原周辺であり、運搬ルートもわかっていること。責任者が事件を隠しているため教団の戦闘部隊である、侵魔に魂を売ったウィザード集団、魔堂騎士団は動いていないと思われる、ということだそうです。途中で先に飛び出していった2人も合流し(路上ライブをしていたようです)、捜索は開始されました。

5人は運搬ルートを見て回り、途中にある池の付近で道路の状態が極めて悪くなっていることを突き止め、魔杯はこの池に落ちたのではないかと推理し、池の探索を開始したそうです。池では子供が遊んでおり、ヤルセが話を聞くと「最近不思議なものが落ちていることがある」ということがわかり、その日見つけたものを見せてもらうと、それは魔石だったそうです。魔杯のほかにもいくつかの魔道具が荷台から無くなっていたことから確信が強まり、その子供に他に変わったものがなかったか聞いたところ、友達が骸骨のコップを拾っていたと答えたので、そこに案内してもらい、魔杯を拾っていた一条仁という少年と会うことに成功しました。仁少年が、アイドルである星野のファンであったので、サイン色紙と魔杯を交換することで、穏便に決着はついたらしいのですが、そこに魔堂騎士が3人、魔杯を探して現れました。

幸いにして、その3人はたいした準備もしていなかったようで、あっさり撃退できたようです。猪狩遼馬から連絡を受けて私が現場についたときには、もう全部済んでいました。5人は立派に任務を達成したのです。
私がアンゼロット様に連絡を入れたのは、この時です。アンゼロット様がお呼びだと5人に言ったところ、素直についてきました。そして、鏡の通路から戻ろうとしたとき7人の侵魔と遭遇したもです。

それについては、いずれ別の報告書として提出します。
七里天音