ガヤンの巡査長による報告書


あれはまさに私と悪魔との死闘だった。

困難かつ地道な調査の末に、ついに私はこの町を騒がせている悪魔の居所を突き止めた。それはとある貴族A(仮名)の屋敷だった。どうやら其処の主人が悪魔になったらしい。
突入当初は冒険者たちがついてきていたが、おぞましい姿をした悪魔の手下と遭遇した際に全員気絶してしまい、結局私は一人で気絶した冒険者たちを守りながら戦うことになった。そして2時間以上にもわたる戦いの末に、数百体にも及ぶ悪魔の手下たちを全てなぎ倒し、地下室に潜む悪魔と対峙した。
「ここにいたのか!悪魔め、今すぐに町の人たちにかけた魔法を解くのだ!」
私は悪魔に向かって叫んだ。あの悪魔もかつては人間であったものが変身したのだから、私はそこに人間としての良心の存在を信じたかったのだ。しかしその期待は無常にも打ち砕かれた。
「ふはははははは、矮小な人間め!貴様ごときがこの私を止めることができると思っているのか!貴様は死ぬがいい!」
その言動からは人間らしさは感じられなかった。
「くそっ!戦うしかないのか…」
悪魔は猛毒の胞子を放ち、恐るべき溶解液を吐き、禍々しい触手を振り回して私に攻撃をしかけてきた。その攻撃一つ一つが私にとって必殺の威力を秘めていること、そして少しでも油断することは即、死につながることを私の勘が教えてくれた。
幾多の攻撃に必死の体術で対抗し、数多の魔法に己の勇気で抵抗し、その合間に放った何度目かの私の連続攻撃が悪魔を捕らえたとき、悪魔はついに崩れ落ちた。合計で数時間にも及ぶ戦いの決着はこうして着いた。私は疲労によりしばらく動けなかったが、あたりの雰囲気が変わったことでようやく緊張を解くことができた。
しかし、ようやく町に混乱を振りまいていた悪魔を倒したというのに、私の心の中は悲しさであふれていた。結局あの悪魔を説得することができなかったからだ。
「戦いは、いつも悲しい」

敵の残党がもういないことを確認してから、私はガヤンの神殿へと出向いた。そして部下たちを率いて例の屋敷へと再び向かうと、冒険者たちが目を覚ましており、自分たちが悪魔を倒したのだといってきた。どうやらショックで記憶が混乱しているらしい。

幸い今回の事件の被害者は命に別状はなかったが、次もうまくいくとは限らない。そのためにも私はこれから己を鍛えていこうと心に誓った。

ガヤン神殿巡査長 B(仮名)

なお、この報告書は事件の調査を行っていた冒険者の話と矛盾した点があり、信憑性については不明である。

ついでに、これはゲーム研で行ったガープス・ルナル第3回の余談であり、書いたのは参加者の「兜・甲虫」のスーツアクター?である。
なんとなく冗談で書いたので、あまり気にしないでいただきたい。